「AIなら競馬で勝てる」は本当? AIブームに便乗した競馬予想詐欺の手口
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先日届いた迷惑メール、開いてみたら「競馬で稼げます」的な文言がずらり。その中には様々な独自ルートから手に入れた情報などととあわせて、「特許AI」という文字がありました。それがこちらの記事。
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え、競馬で投資詐欺、まだやってるんだ、と思いながら試しに「競馬予想AI」で検索してみたんです。
案の定というか、怪しさ満点のサイトが沢山。AIが進化した今の時代でも、詐欺手口自体は変わりません。
2017年に書いたこちらの記事では、
【競馬予想】絶対に的中する馬券の買い方【本当に当たる】
電話でターゲットを洗脳したり、料金自体よくわからない情報サイト、高額ツールの販売などが主立ったものでした。
今はAIの進化に便乗して「AIが導き出した必勝パターン」「機械学習による期待値算出」といった言葉が並びます。
人間の直感や人脈だった売り文句が、いつの間にかアルゴリズムとデータ分析に置き換わっただけ。
道具が変わっただけで中身は同じってわけですね。
AIに競馬予想はできるのか
AIに競馬予想ができるかどうかというより、得意不得意があるといった感じでしょうか。
過去のレース結果や走破タイム、血統、馬場状態など、大量のデータを集めて整理し、比較することはAIの得意分野です。
人間が何時間もかけて調べるような情報でも、条件を指定すれば短時間で処理できます。
AIの予想には「前回外したから今回は取り返したい」「この馬好きだから買う」みたいな感情のノイズも入りません。
全くノイズが無い状態というのは、人間にはなかなか難しいでしょ?
一方で、AIにもできないことがあります。手元にない最新情報は分かりません。また、持っている情報が間違っていれば、それをもとにした予想も間違います。
レース当日の急な体調変化や落馬など、そもそも事前に予測できない出来事もある。
AIは「予想するための材料」を整理するのは得意でも、「未来を確実に当てる」ことができるわけではないのです。
ここを勘違いしてはいけないんですよね。
AIが人間より速く、大量の情報を処理できる。でも、それと「競馬で勝てる」は全く別の話です。
控除率無視の「勝てます」
控除率とは、馬券の売上から胴元であるJRAが差し引く割合のこと。
券種によって異なりますが、JRAの控除率はおおむね20〜30%です。
つまり、馬券が100%そのまま払戻しに使われるわけではありません。
馬券全体の売上から一定割合が控除され、残った金額が払戻しに回されます。
過去の記事でも書いたように、馬券を買った時点から購入者にとってマイナススタートという競馬の仕組みは、予想するのが人間でもAIでも変わりません。
ところが、この前提をすっ飛ばして「AIなら勝てます」と宣伝するものがあります。
たとえば、こんな文言です。
- ・勝率92%のAIが導く負けない馬券の買い方
- ・月利30%を実現する自動投資システム
- ・AIが的中率を数値化。あとは買うだけで資産形成
こうした宣伝で強調されるのは「何%当たるか」という数字ばかり。
的中率が高いことと、最終的に利益が出ることは同じではありません。
控除率という競馬の基本的な仕組みを説明せず、「勝率」「的中率」「月利」だけを見せて「これなら勝てそう」と思わせる。
これがAI競馬詐欺でよくあるパターンです。
オッズが崩れる事実
JRAのオッズはパリミュチュエル方式で「その馬券に集まった賭け金の総額」を元に決まる仕組み。
特定の馬に人気が集中するほど、その馬の取り分(払戻金)は減っていきます。
たとえば、あるAIが「この馬が本命」と弾き出した情報が広まり、同じ馬券に人気が集中したとします。
発表直後は仮に5倍あったオッズが、締め切り間際には2倍まで落ち込む、なんてことも普通に起こる。
AIの予想通りにみんなが馬券を買えば、期待値が高いはずの馬券のオッズはあっという間に下がって、おいしくなくなる。
本当に当たる予想ほど、実は「おもんないやんけ」という結果になるのです。手堅くいきたい人向けではありますね。
といって「競馬で手堅く稼ぐ云々」といった商材もありそうですが(笑)。
突発的なトラブル
当日のパドックでの急な体調不良、ゲート入りの手間取り、落馬事故。こういうデータ化しようのない出来事は、AIにも予測しようがありません。
馬と人間、どちらも生き物である以上、アクシデントは付きもの。
そして、この予測不能な部分がまた詐欺師の得意分野なんですよ。
データだけでは埋まらない部分があると、「そこを読み解ける特別な目を持っている」という体裁の予想師や、「AIだけが見抜ける」という体裁のツールが入り込む隙も生まれてしまいます。
出走前のパドックの様子を見るだけでもレースの参考になります。これは事実。でも、AIにはまだ分析できない領域。
ただ、そうね、私が詐欺師なら「AI搭載の眼鏡で馬を観察し、リアルタイムでAIに分析させている」といったウソをつく。
実際にAI搭載の眼鏡を装着している画像も一緒にウエブサイトに掲載するわ。
AIブームに便乗した競馬予想詐欺手口
昔は電話口で巧みに口説き落とすタイプが主流でした。
今は「最新テクノロジー」という言葉そのもので、あなたの思考を止めにかかってきます。
- ・AIだからすごい
- ・AIが膨大なデータを計算しているから正確
- ・AIが選んだ馬なら間違いない
- ↓
- ・だから、あとは買うだけ!
こんなふうに、「AI」という言葉を根拠にして、少しずつあなた自身が自分で考えなくてもいい状態に持っていくわけ。
でも、AIが計算したからといって、その予想が必ず当たるわけではありません。
AIがどんなデータを使ったのか、本当に最新の情報なのか、その予想にどれだけ根拠があるのか。そこは自分で確認する必要があります。
詐欺師の狙いは
「AIに任せておけば大丈夫」「自分で考えなくてもいい」という安心感です。
詐欺師はそういった心理状態を狙ってくるのです。
詐欺の正体はソーシャルエンジニアリング|心理操作の原理を解き明かす
そこに高額なソフトや「AIが選んだ必勝馬券」を組み合わせれば、「自分で判断するよりAIに任せたほうがいい」と思わせることができますよね。
こちらの記事にも通じる部分ではないでしょうか。
「怪しいメール」はもう古い。攻撃者が本当に狙っているのは信頼そのものだった
完全自動売買AIソフトの高額販売
「AIが勝率や期待値を自動計算して、馬券まで勝手に買ってくれます」「何もしなくてもAIが資産を増やします」などと宣伝し、InstagramやX、LINEから集客。
数万円から数十万円、ひどいものになると百万円を超えるソフトを売りつけるパターンです。
でも、AIが自動で予想して馬券を買ってくれることと、競馬で勝ち続けられることは別問題。
ソフトが自動で動いてくれても、競馬そのものの不確実さがなくなるわけではありません。
それなのに「AIだから勝てる」「完全自動だから放置で稼げる」と思わせて、高額なソフトを購入させようとするわけです。
こういうソフトほど、実際の取引履歴や利益の根拠がはっきりしなかったり、うまくいかなかった場合の返金条件が曖昧だったりします。
「AIが何をしてくれるのか」ではなく、「本当にそれで利益が出ることをどう証明しているのか」。
高額なソフトを勧められたら、そこを確認してください。
ChatGPTなど生成AIに乗じた騙し
「未公開のAIプロンプト」「プロが開発した競馬専用GPT」なんて名目の情報商材、見かけたことありませんか。
中身を見ると、ただの汎用的な質問文だったりします。
ChatGPTなどを日常的に使っている人なら、AIに漠然と「今度のレースの買い目教えて」とか「どの馬が勝つ?」と聞いただけでは、全然ダメだとわかっています。
何をどう具体的にプロンプトへ盛り込むのか知りたい人を狙っているともいえます。
ある程度AIを使い慣れてきた層をターゲットに、「そこそこ知っているからこそ、もう一歩踏み込んだ情報が欲しい」という気持ちに付け込んでくるパターンですね。
SNSの「AI的中実績」が入り口にも
SNSは詐欺師がカモを探す格好の場所であることを忘れないでください。
昔の電話詐欺と構造は同じです。後出しじゃんけん、画像加工、サクラの口コミ。
「AIだから当たる」と思わせたいだけで、AIかどうかは正直どうでもいい話なんですよね。
的中実績と言いながら、既に行われたレース結果を掲載しているだけだったりします。
実績はいくらでも捏造できるということを忘れないでください。
投稿のタイムスタンプなどは後から編集できますし、外れた予想だけ削除すれば、見かけ上は「勝率100%」の実績表が出来上がります。
フォロワー数やコメント欄の盛り上がりも含めて、演出できる部分だという前提で見るくらいがちょうどいい感じ。
AI競馬詐欺に遇わないために
以前の記事で挙げた「電話番号登録が必要なサイトは避ける」「収支は必ずつける」に、今の時代ならではの視点を足しておきます。
「絶対」「100%」「放置で月利〇%」は、その言葉が出た時点でアウトです。
データサイエンスの世界に「100%確実な未来予測」は、そもそも存在しません。
振込先や運営者の表示もチェックしておきましょう。振込先が法人ではなく個人口座、あるいは暗号資産を指定してくる。
会社の住所がバーチャルオフィスで、電話番号がIP電話や携帯番号のみ。こういうサインは見逃さないで。
そして一番わかりやすい見分け方は、「買い目」ではなく「ソフトやシステム」を売りたがるかどうか。
本当に勝てるAIシステムがあるなら、それを他人に売ってオッズを下げてしまうメリットがどこにあるでしょう。
売る側にとっては、システム自体を売るほうが確実に儲かる。ただそれだけの話。
あなたを競馬で勝たせようとは全く思っていません。
AIを使って競馬予想をする際の注意点
もしあなたがAIを使って競馬予想をしてみたいと思うなら、注意して欲しいことがあります。
AIはツールであり、あなたの願いを何でも叶える魔法のランプではないということが大前提です。
リアルタイムデータとは限らない
AIが処理できるのは、あくまでAI自身が持っているデータの範囲内の話です。
学習データがいつのものかによって、直前の馬体重の増減やコース変更、当日の天候急変といった最新情報が反映されているとは限りません。
「AIが出す情報は常に最新」というのは思い込みで、リアルタイム連携をきちんと組んでいないシステムなら、少し古い情報で予想している、といったことも普通にあります。
仮に「必ず最新情報にして」頼んでも絶対はありません。
間違いもある
ハルシネーションという、もっともらしい誤情報を自信満々に出力してしまう現象。
わからないならわからないと答えればいいのですが、なんとかあなたの要求に応えようとした結果、嘘を回答してしまう。
なんとか要求に応えようと結果、AIエージェントが前代未聞の事件を起こした事例がこちら。
ジムの予約がまさかの不正アクセスに?オーストラリア発AIエージェント事件
上記のように「必ず最新情報にして」頼んでも、「こちらが最新情報です」と、自信満々に去年のデータを出したりするんです。
AIが吐き出す競馬予想に、誤情報が紛れていても不思議ではない。とはいえ、競馬予想に誤情報は厳禁ですからね。
間違っていないかどうかは人間が精査する必要があるのです。
AIに何度か精査させ、最終的に人間が見るでもかまいません。
勝てることは別問題
「競馬予想AIプロンプト」「競馬予想AI自作」こういうキーワードで検索する人が増えているのも、わからなくはないですよ。
人間より遥かに視野は広いし、処理も圧倒的に速い。そこは素直にすごいと思います。
でも、視野が広くて速いことと、勝てることは別問題でしょ?
仮に自分でプロンプトを組んだところで、AIがやっているのはデータ収集と処理まで。控除率もオッズ崩壊も突発トラブルも、そこから先は越えられません。
もし「AIに任せれば何とかなる」と思っているなら、色んな意味で危ういサイン。
AIは、人間が処理しきれない膨大なデータを代わりにさばく優秀なツールです。
お金を勝手に生み出す魔法のランプではありません。
競馬予想をするなら、得体の知れない高額ツールに頼らず、自分で情報を確認し、資金管理をすることです。
何%を賭けるか、いくら負けたら止めるか。
それを自分で決められないなら、そもそも手を出さないほうがいい。
時代が変わっても、「自分で判断・管理できないなら手を出すな」「熱くなったら負け」という、ギャンブルの一番シンプルな真理だけは変わらない。
コツコツ手堅く賭けるか、大穴狙いでドンといってパッと散るか。遊び方はそれぞれで構いません。
そこに必勝法は存在しないということを忘れなければ、詐欺に遇うこともありません。
3連単5294万円という万馬券が出る
この記事を書いている最中に、中山競馬場で3連単5294万円という万馬券が出てビックリ。なんというタイミングなんでしょうね。
さて、「競馬専用GPT」や「競馬予想AI」で検索したら、今回も楽しかったです(笑)。以前記事を書いた時も色々面白かったのですよ。
AI予想だけでなく、人間予想も組み合わせてやってみたとか、ChatGPT に競馬予想をさせるため、膨大なプロンプトを書いたといった実体験。
他には無料でプロンプトを公開していたり、ChatGPTのGPTsストアに競馬予想マスターというボットがあるとか、本当に色々出てきました。
感じたのは「考えることは皆同じ」だなってこと。当然そこに詐欺師も便乗。いつも書いていますが、詐欺師手口に大した変化はないんですね。
人間の心理にどう付け込み操るかですから。
手口に変化はないけど、常にその時々の流行や時代背景をうまく取り入れています。
AIのように新しい何かが出た時、災害のように人が困っている時、世界的なイベントがある時。
そしてこの30年に渡る長い不景気は詐欺師にとって最高の舞台です。
特にお金が稼げる、資産を増やせるといった話には飛びつかないようにしましょう。
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