【SNS副業詐欺】インフルエンサーに成りすまし副業へ誘導する詐欺グループを府警が摘発

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大阪府内に住む30代のAさんは、会社員として働きながら3人のお子さんを育てるお母さんです。
2年ほど前から、子ども向けのお弁当を紹介するSNSアカウントをフォローしていました。
ある日、そのアカウントから直接メッセージが届きます。「25万円を払えば、月10万円ほどの副業収入をSNS運用だけで得られる」という話でした。

最初は興味がなかったというAさんですが、丁寧なやり取りが続くうちに、次第に気持ちが変わっていきます。
フォロワー数の多さや、投稿されている料理や子育ての内容が自分と重なっていたことから、「同じ主婦」としての親近感が芽生えていったといいます。

子どもたちのために収入を増やしたいという思いと、2年間見続けてきたアカウントへの信頼から、Aさんは約25万円を支払いました。
しかし、教材やサポートを受けても、実際に収入を得るための具体的な方法は最後まで示されませんでした。Aさんが詐欺だと気づいたのは、そのあとのこと。

このAさんのケースは、2026年に大阪府警が摘発した大規模なSNS副業詐欺事件の被害の一例です。
皆さんの中にも、日頃からチェックしているインフルエンサーのアカウントがあるという方は少なくないと思います。
今回は、この事件の手口と、なぜこれほどの規模に広がったのかを整理していきます。

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事件の概要-二度の逮捕で見えてきた全体像-

育児・料理系のアカウントから副業の勧誘が届く様子の4コマ漫画

大阪府警特殊詐欺捜査課は2026年6月10日、大阪市北区に本店を置く「株式会社Unity」の代表・松村真吾容疑者(29、大阪市淀川区)と藤木来人容疑者(29、大阪府吹田市)ら41人を、詐欺の疑いで逮捕したと発表しました。
実質的な活動拠点は大阪府吹田市のビルの一室にあったとされ、府警は前日の9日にこのビルを含む複数箇所を家宅捜索し、スマートフォンやパソコンなど1000点以上を押収しています。

逮捕容疑となったのは、2025年11月から2026年3月にかけて、SNSで副業収入を得ているとする架空の人物になりすまし、大阪府内の30〜50代の女性3人に「スクールを受講すれば高額な収益を生み出せる」などとうそを言い、受講代名目で約15万〜51万円をだまし取ったというもの。

さらに2026年7月1日には、松村容疑者を含む13人が別の容疑で再逮捕されました。
今回の容疑は、静岡県や愛媛県などの30〜40代の女性3人から約18万〜51万円をだまし取ったというもので、悪用されたアカウントは「離乳食レシピ」を発信するものなど3つ、合計で約50万人ものフォロワーを抱えていたことが分かっています。
府警は、容疑者らがこのほかにも数十のアカウントを運用していたとみて、実態の解明を進めています。

府警によると、松村容疑者らのグループによる被害は2025年の1年間だけで全国約2300人、被害総額はおよそ6億5000万円にのぼるとみられています。
組織的な役割分担の実態から、府警は「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」による犯行の可能性も視野に入れて捜査を続けています。

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用意周到な詐欺手口

SNSアカウントと誘われた副業に疑いを持たない理由

今回の事件で使われた手口は、大きく3つの要素で構成されています。

インフルエンサーアカウントの買収

容疑者らは、離乳食レシピや子ども向け手作り弁当など、育児・料理系の投稿で多数のフォロワーを集めていたアカウントを、仲介業者を通じて購入していました。

「SNSアカウントが売買されるの?」と驚かれる方もいるかもしれませんが、フォロワー数の多いアカウントを企業や個人が買い取れる仲介サイトは実際に存在し、集客力のある「資産」として取引されているんですよ。
私自身も当サイトに対して「売りませんか」という勧誘メールが届いたことがあり、こうした売買の打診自体は珍しいものではありません。

本来は運営者が交代しても発信内容を引き継ぐような、いわば事業譲渡に近い使われ方をする仕組みです。
今回はこの仕組みが悪用され、フォロワーからすれば、これまでと変わらない見た目のアカウントが、ある日突然「乗っ取られている」とは気づきにくい状況が生まれていました。

元の投稿者へのなりすまし

アカウントを取得した容疑者らは、元の投稿者になりすまして「スタートして2カ月で10万円収益達成」といった副業の実績を発信し、情報商材やスクールへの勧誘を行っていました。
フォロワーが積み重ねてきた「このアカウントは信頼できる」という感覚が、そのまま悪用される構造です。

今回のような乗っ取りでなく、ゼロから作られた偽アカウントによる単純ななりすましであっても、フォロワー数や投稿の作り込み方といった見た目だけで信じてしまう人は一定数いるため、注意が必要です。

サクラ投稿と誘導トーク

信憑性を高めるため、他のインフルエンサーや受講生役に「副業で10万円稼げました」といった虚偽の成果報告を投稿させていたことも分かっています。
契約や支払いを後押しするための会話例まで用意されていたとされ、被害者が迷いを断ち切って支払いに踏み切るための仕掛けが、かなり作り込まれていたことがうかがえます。

こうした自作自演は、SNS詐欺に限らず情報商材や投資詐欺でも昔からよく使われてきた手口です。

知恵袋のような質問サイトに「悩んでいたら第三者から回答が来た」という体裁の自演投稿が紛れ込んでいるケースも典型例のひとつ。
最近は検索結果の上位にこうした質問サイトが表示されやすくなっていることもあり、より多くの人の目に触れる状況になっています。

こちらは、知恵袋に自作自演で回答がされていたものです。

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「第三者の生の声」に見えるぶん信頼されやすいという構造は、業界を問わず繰り返し悪用されているという点で覚えておいてくださいね。

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手口で新しいのは乗っ取りの部分

「初期費用を払えば、あとは仕組みが自動で稼いでくれる」という構造自体は、目新しいものではありません。
「配信チャネル」そのものを乗っ取ってしまったという部分が、手口としては新しいといえます。

昔からある詐欺のテンプレート

2000年代の情報商材ブームで見られた手口や、ネットワークビジネスでよく使われる「権利収入」という誘い文句、さらには昔ながらの「材料費を払えば内職を紹介します」という内職商法まで、根っこの部分はどこかよく似ているように思います。

これらはいずれも、昔からある詐欺のテンプレートです。
今も継続して使われ、この先も詐欺師は使い続けるでしょうから、頭の片隅に置いておいてくださいね。

  • 📌費用を先に払わせ、具体的なノウハウは後回しにする
  • 📌「他の受講生も稼げているという成功事例を見せて信頼性を補強する
  • 📌主婦や子育て世代など属性の近さを利用して警戒心を下げる

特別感の演出

もうひとつ、詐欺のあるあるとして見逃せないのが「特別感」です。

何年も見続けてきた憧れのインフルエンサーから、ある日突然、自分だけにメッセージが届いたということ。
これは「沢山いるフォロワーの中から選ばれた」という高揚感を生み出します。

一方的に見ていた相手と急に双方向のやり取りが始まることで、好意的な感情が先に立ち、その相手を疑うこと自体難しくなってしまう。

芸能人や有名人を騙る当選商法・DM詐欺などでも繰り返し使われてきた古典的な構造で、「憧れ」と「同じ主婦」としての親近感が同時に働くことで、警戒心が二重に緩んでしまう点が今回のケースの特徴だと言えます。

支払いを自然な行為に見せる

中でも見落とされがちなのが、「受講料」「教材費」という名目そのものが持つ効果です。
多くの人は「詐欺=理由もなく金を要求してくる」という直感で警戒心を働かせています。

ところがこの手口は、お金を払えば教材やサポートを受け取れる、というごく当たり前の買い物と同じような形です。
「講師」「受講」という言葉が使われることで、学校や習い事にお金を払ってきた経験と同じ枠組みに当てはめられ、支払いが自然な行為として処理されてしまう。

さらに、丁寧なやり取りを重ねる中で「小さな同意」を積み重ねさせられていくため、いざ金額の話になった時には断りにくい空気ができあがっています。
「詐欺に遭っている」のではなく「自己投資している」という感覚にすり替わってしまう。

これが本当の狙いだと言える部分でしょう。誰にとっても、決して他人事ではない罠です。

配信チャネルの乗っ取り

では、今回の事件で以前と変わった部分はどこでしょうか。それは、こうした古典的な手口を運ぶ「配信チャネル」そのものを乗っ取ってしまった点です。
従来の情報商材詐欺は、見知らぬ誰かからの勧誘でした。

今回は、フォロワーが2年、3年と積み重ねてきた「このアカウントは本物の主婦が発信している」という信頼による安心感をそのまま利用しています。
Aさんが「同じ主婦としてお料理や子育てのことだったので、親近感が湧くようになってきて」と振り返っているのは、まさにこの部分ですよね。

見知らぬ人からの勧誘なら働いていたはずの警戒心が、「知っているアカウント」というだけで大きく緩んでしまう。
これが、被害が2300人・6億5000万円という規模にまで広がった大きな要因だと考えられます。

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騙されないためにチェックしておきたいポイント

普段からフォローしているアカウントであっても、次のような変化があった場合は注意が必要です。

  • 🆖投稿内容や口調が、以前と比べて急に変わった
  • 🆖フォロワー限定のような形で、副業や高収入の話を持ちかけられた
  • 🆖「受講料」「教材費」などの名目で先払いを求められた
  • 🆖「〇カ月で〇万円達成」といった具体的な成功談を強調してくる

大切なのは、「知っているアカウントだから」という安心感を、一度立ち止まって疑ってみることです。
アカウントの人格と、その裏にいる運営者が同じである保証は、実はどこにもありません。

また、フォローに関係なく、副業や高収入の話を持ちかけられても相手にしないようにしてくださいね。それはSNSでも、リアルの知人でも同じです。

※本記事は、2026年6月〜7月にかけて報じられた大阪府警による一連の逮捕・再逮捕に関する報道をもとに構成しています。
捜査は継続中であり、今後の続報によって内容が更新される可能性があります。

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